人生100年時代のライフシフト 第1回 「ほしい未来は自分で作る~住民×多様な主体による課題解決プロジェクト~」

市民力UP!(人材育成)

  • 企業の方
  • 個人の方
日 時
2018年2月18日
場 所
嘉悦大学 A211教室

共催:嘉悦大学経営経済研究所、NPO法人マイスタイル

実施プログラム

ゲスト:藤倉 潤一郎 氏(地域協働推進機構 代表取締役)

 

ゲスト:小澤 浩 氏(NPO法人ユーアイネット柏原 代表理事)

 

聞き手:竹内 千寿恵(NPO法人マイスタイル 代表理事)

ゲスト

藤倉 潤一郎氏 (ふじくら じゅんいちろう)

地域協働推進機構 代表取締役

2004年、千代田区の公共施設を複合的なまちづくりの課題の一体的な解決を目指す拠点施設へとコンバージョンする目的でプラットフォームサービス株式会社を設立し、代表取締役に就任。2007年、鶴ヶ島市協働政策幹、内閣官房地域活性化伝道師に就任。2008年第三セクター方式の非営利型まちづくり会社、地域協働推進機構の設立に伴い、代表取締役に就任。2016年所沢市に開設した地域の未来を共創するコワーキングスペース所沢ノードは所沢リビングラボの拠点としての役割も果たす。
http://tokorozawa.seedx.jp/

小澤 浩氏(おざわ ひろし)

NPO法人ユーアイネット柏原 代表理事

大学卒業後、民間企業に就職。海外勤務3回延べ15年の海外生活を含めて、40年間の企業戦士から卒業。海外勤務中に社会貢献活動の必要性と重要性を実感。自治会活動をはじめいろいろなボランティア活動開始。2010年、狭山市主催のコミュニティビジネス講座で、地域社会の課題をビジネスの手法を駆使して解決する術を学ぶ。2011年、内閣府地域社会雇用創造事業・ソーシャルビジネストライヤル関東リーグCB起業プランコンペに応募、最優秀賞受賞。2012年思いを同じにする仲間とともにNPO法人ユーアイネット柏原設立。“住民みんなが、希望と自信と誇りを持って安心して楽しく暮らせるまち”づくりを目指して活動中。
http://www.sayama-ui.net/

コーディネーター

竹内 千寿恵(たけうち ちずえ)

NPO法人マイスタイル 代表理事

NPO法人マイスタイル 代表理事/ 広域関東圏 コミュニティビジネス推進協議会 幹事/多摩CBネットワーク世話人

商店街生まれの商店街育ち。結婚後、1~2年おきに8回の転勤生活。その間の出産、子育ておよび両親の遠距離介護を通じて、地域のサポートの重要性を実感。その体験がベースとなり2006年コミュニティビジネス活性化を目指しNPO法人マイスタイル設立。

レポート

平昌オリンピックでフィギュアスケート・羽生結弦選手の金メダル、五輪連覇に日本中が沸いた翌日。スピードスケート・小平奈緒選手が金メダルに輝く数時間前――

小平市の嘉悦大学では「人生100年時代」に向け、私たちの生き方や未来を考える連続3回の講座がスタートしました。初日は満席御礼!

老後の生き方を模索するミドル世代・シニア世代だけでなく、妊娠中の女性、80歳を過ぎても現役で仕事をしている方など、多様な世代が市内外から集まりました。

「人生100年というと、今年50歳の僕はまだ半分…しんどいですね」と笑う、地域協働推進機構代表取締役の藤倉潤一郎さん。

「100歳になることは、オリンピックで世界一になることより難しくない」と語る、NPO法人ユーアイネット柏原代表の小澤 浩さん。

講座の初回は、このお二人をゲストに招き、人生100年時代を生き抜くヒントになる、先駆的な取り組みについてお話いただきました。

ゲストトーク①

多様な地域課題の解決にリビングラボで挑む

ゲスト:藤倉 潤一郎 氏(地域協働推進機構 代表取締役)

28190528_768631053341418_163513208_n

「“人生100年時代”はどういう時代なのか。僕自身も勉強中なんですが、今日はその内容をみなさんとシェアしたい」

現在は「所沢ノード」(http://tokorozawa.seedx.jp/)を拠点に、地域の社会起業家を応援するような活動をされているという藤倉さん。

このテーマの概論からわかりやすく話してくださいました。

 

高齢者も社会の力になれる“ビンテージ社会”

「高齢化社会」というと、「老いていく社会」というマイナスイメージを思い浮かべがちですが、年を重ねることで生まれる価値をもっとポジティブに生かせないでしょうか。

時間を経て価値が高まるワインのように――それが、「ビンテージ社会(ソサエティ)」という考え方です。

藤倉さんはそんな仕組みづくりを目指し、埼玉県所沢市でリビングラボ(住民と企業や自治体、大学や研究機関などの関係者が共に、生活者のニーズを拾い、製品やサービスの開発などで課題解決に向けた取り組みを行うこと)という活動を通して、多世代交流型の学び、遊び、仕事づくりに取り組んでいます。

スタートして6か月、さまざまな活動や事業を結びつけ、“プラットフォーム化”することで、相乗効果が期待できることが見えてきたといいます。

ビンテージ社会に必要なのは、「健幸づくり」「人づくり」「仕事づくり」。

この3つの概念でプラットフォームを作り、個々に行われていた活動を結びつけることで、それぞれが自分の能力を発揮して助け合える、よい循環が生まれる――。

所沢とは環境が似ているという小平エリア。今回のお話をヒントに、この講座の参加者から、小平周辺でもこうした活動が広がると素敵ですね。

ゲストトーク②

高齢化したニュータウンを住みよいまちに! 住民自ら生活支援と集いの場づくり

ゲスト:小澤 浩 氏(NPO法人ユーアイネット柏原 代表理事)

28117666_768631050008085_903179922_n

「住民の中に“お宝”がいっぱいあるんです! それを活かせば、みなさんの住んでいる街は今よりもよくなる」

そう語る小沢 浩さんは、海外赴任経験もある元ビジネスマン。その経験から培われた感性を生かし、地元の元気なシニア層が中心となって力を発揮できる「地域支え合い」の仕組みを作り事業化したのが、NPO法人ユーアイネット柏原(http://www.sayama-ui.net/)です。

平均年齢77歳が主役の有償ボランティア活動

1980年代に造成された郊外型のニュータウンでは、各地で少子高齢化が急速に進み、生活弱者が増えています。狭山ニュータウンも例外ではありません。

このままではニュータウンではなく、“オールドタウン”、“ゴーストタウン”になってしまう……。

そんな危機感を感じた小沢さんが目をつけたのが、地域の中に眠るお宝――たくさんの知識や人脈を持ったビンテージ・パーソンです。

7BE432BD-1FB8-41D2-8188-E042E64C8500

「ここに写っているのは平均年齢77歳の“ビンテージ”。いい顔してるでしょ」と小澤さん。

NPO法人ユーアイネット柏原では、地域の元気なシニア世代が中心となり、生活弱者の支援や、住民同士の交流の場を作る事業を行っています。

「住民のみんなが、希望と自信と誇りをもって、安心して楽しく暮らせるまちを作る」ことを理念とした支え合い活動ですが、持続可能性などを考慮して有償ボランティアの形をとました。

サービスを提供するシニアには、対価として地域商品券を発行。商品券は地元の加盟店で利用できるので、地域経済と街の活性化にもつながります。

質問トークライブ

最後に、藤倉さん、小澤さんからの中身の濃いお話を受けて、休憩時間に集められた受講者のみなさんからの質問に時間の許す限りお答えいただくトークライブ。

マイスタイル代表・竹内の司会で、さらに理解を深める時間となりました。

28190942_768661086671748_1261015560_n

“風の人”と“土の人”――地域の活動には役割分担がある

『所沢市民ではない藤倉さんが、市民活動に参画するために、どのように信頼を獲得されたのでしょうか?』

どんな事業も、信頼を獲得できれば、8割は成功したも同じ。核心に迫る質問です。

「活動に共感してくれる地域の方といっしょにやっています。僕は所詮“外の人”ですから、『こうしたほうがいいんじゃない?楽しいんじゃない?』と無邪気に言って引っ掻き回しているだけ(笑)。地域の人にやってもらうための場所は用意するけれど、自分はやらないほうがいいと思っています」

そう答える藤倉さんは、ご自身の動き方を“旅人”のようだと表現します。

藤倉さんのように“風”を吹かせる旅人タイプの人がいれば、その風を受けて自分の土地で畑を耕し、形を作る“土”の人もいます。それぞれ役割分担をすることが、地域の活性化には必要。

「10年後はここにはいないかもしれない」という藤倉さん。きっと、その頃には別の場所で、新しい風を吹かせていることでしょう。

 

地域のニーズを知るために

『地域のニーズの調査はどのようにされていますか?』というお二人への質問。

所沢ノードのオープン前には、調査会社も使って交通量なども含めたかなり緻密な調査をしたという藤倉さん。

今後は「コミュニティカルテ」という調査方法に注目しているといいます。地域にも人と同じように性格がある。地域の性格を知ることで、同じ問題の解決を目指すにしても、より効果的な対処方法が浮かび上がるのだといいます。

一方、小澤さんにとっては「住んでる街でこういうものが欲しい」というご自身の思いが地域ニーズ。

「ニーズの調査はやったことはありません。狭山ニュータウンは自分が住んでいるところですから、ほとんどのことはわかっている。あとは、人と話をする中から類推するだけ。動物的な勘です(笑)」

どちらも、地域のニーズを知るための大切な要素です。

27973906_1767195716675324_690617753017579412_n

最後に、嘉悦大学副学長・跡田直澄教授からアドバイスをいただきました。

「起業には、なんといっても「お金」が必要。そして「情報」が大切です。

どんなサービスが必要とされているのか、ニーズを調査すること。助成金などでお金を確保するための情報もわかりにくいところにある場合があるので、自治体のホームページを常にチェックすること。

必要な情報を得られる人脈を作っておくのも心強いでしょう」

 

3時間半の講座を通して、参加者のみなさんは何を感じ、どんな課題を持ち帰ったのでしょうか。

「ほしい未来は自分で作る」そのための一歩を踏み出せたとき、振り返るとこの日がスタート地点だったなと思えるのではないでしょうか。

参加者の声

・ 実践して成果を上げている方々のお話は、学ぶ点が多かったです。 (50代・女性)

・ 元気なシニアが支え合いをすることにより、100歳に挑戦することが可能であり、自分の現在取り組んでいることに自信が持てました。(70代以上・男性)

・ 俯瞰的なデータによる視点と現場課題の身近な視点から、具体的なお話が伺えて勉強になりました。ありがとうございました。 (50代・男性)

・ ユーアイネット柏原のお話が具体的でわかりやすく、興味深く聞くことができました。質問トークライブも面白かったです。 (40代・女性)

前のページへ戻る