CSR講座レポート

コミュニティビジネスを考える上で、欠かせない視点が「パートナーシップ」です。

2007年2月に開催した「コミュニティビジネスシンポジウムin小平」のテーマは、まさしくこの「パートナーシップ」でしたが、その流れを受け、2007年4月17日、小平市において、企業との連携をテーマに「企業の社会的責任」=CSRの流れを考える講座「地域も企業も元気になるCSR講座」を企画しました。

企業も利益第一のこれまでのあり方から、社会貢献の視点をもった事業展開へ流れが変わってきています。
この動きは、NPOや市民活動の目的とも一致するものであることから、CSRの実態や課題を知ることで、よりよいパートナーシップを築こうという考えが広がっています。

CSRというテーマは、今、さまざまなアプローチがされていますが、今回の講座は「地域」にスポットをあてた、草の根のCSRを考えるものです。
コミュニティビジネスや市民活動を考える上でも、CSRは今後、ますます大切なポイントとなってくると思われます。

講座定員は30名。
当日はあいにくの雨でしたが、満員御礼でした。
参加は企業とNPOがほぼ半数ずつ。質疑応答の時間にも活発に質問が寄せられ、このテーマに対する関心の高さが感じられました。

第一部 講演 地域におけるCSR現状と課題 
講師:町井 則雄氏(日本財団 情報グループ CANPANチーム リーダー)


第一部講師は、町井 則雄さん(日本財団 情報グループ CANPANチーム リーダー) 。
テーマは、「地域におけるCSR現状と課題」。

日本のCSRの現状について、それぞれプラス面、マイナス面を解説。
そこから発展して、CSRの課題を、まず全国の流れの中で抽出しました。
次いで、「地域のCSRの現状と課題」について、こちらもプラス面、マイナス面の両面からの見方を語ってくださいました。

CSRの現状が必ずしも「プラス」要素だけではないということ、「マイナス面」を把握し、そこから見えてくる課題を考えるという流れのお話によって、CSRの現状について、すっきり頭の中を整理することができました。

続いて、こうした課題を解決する上でなにが必要なのか、その解決策の一例としての「CANPAN」サイトのコンセプトとこれまでの実績、そして今後の展望が紹介されました。

目指すことは公益活動の的確な情報開示のサポートということです。
情報開示こそが信頼の基礎であり、それがあってこそ企業と公益活動のつながりがうまれ、CSRも推進されるという発想は、今後、企業もNPOをはじめとするさまざまな公益活動団体も、ともにもつ必要のある観点でしょう。

最後にCSR事例として大企業の事例と地域密着の中小企業の事例の紹介。

ポイントは「CSRの王道」とは、企業としてCSRを推進することが「自社の利益に直結する方法」を見出し、実現させていくことであるということ。
自社の発展に直結する中で「何ができるのか」を考えるのがCSRとしての王道であるという考えに深く共感しました。

どちらかが与えるだけ、どちらかは受け取るだけという一方的な関係は、一時的には可能であったとしても長続きはしません。
ともにwinwinであって、そのことが社会貢献にもつながるというありかたを探し実現させるプロセスは、地域にとっても企業にとってもやりがいのあるチャレンジという予感のするお話でした。

※町井さんのブログで当日の様子をお伝えいただきました。ありがとうございます。
 http://blog.canpan.info/cosmo/archive/84

 
【受講生さんの声】

CANPANのこれからの取り組みにNPOとして期待します。
人・金・ものの流れをつくるために、団体の四季報のような機能をもたせたい、助成金応募団体の事業内容はこれを見てもらうというシステムづくりなんて、すごいですね。

 

第2部 事例発表1 東京マイコープのCSRについて
  
講師:鈴江 茂敏氏/東京マイコープ 政策推進部長


第2部は身近な地域でさまざまなCSR活動に取り組む事例として、二つの団体に発表をお願いしました。

一例目は東京マイコープ。講師は政策推進部 部長の鈴江さんです。

配送車両650台による都内の見守りの取組み。
三宅島帰島支援、沈み行く島ツバルについての講演会、環境に配慮したリユース瓶の使用、剰余金を活用した「市民活動助成基金」の取組み、風力発電の建設などなど、生協ならではの取組みの紹介がありました。

これまでの生協は組合員組織の中での閉じられた組織内の活動であったのに対し、今回紹介していただいた取組みの多くは、地域コミュニティへの関与をより強め、組合員組織内にとどまらない、より開かれた活動になっているということがわかりました。

外部のNPOや地域団体と連携を深め、その強みを活かす形で業務を委託していく方法など、地域の産業活性化、雇用促進にもつながり、東京マイコープとしての事業発展にもつながる、winwinな展開が始まっているということで、今後も、さらにこの流れが進んでいくことが期待されます。


第2部 事例発表2 西武信用金庫の概要と地域社会への貢献活動について 
  
講師:橋 一朗氏/西武信用金庫 事業支援部部長


二つ目の事例は、西武信用金庫のCSR活動について。講師は事業支援部 部長の橋さんです。

地域の中でさまざまな産業を活性化させるためのサポートを推進することが、ひるがえっては地域密着の金融機関である信用金庫の発展にもつながるという視点は、第一部の講演の中でもふれていた、まさしく「CSRの王道」というべきwinwinな取組みです。

ビジネスフェア、セミナー開催、ビジネスマッチング、ビジネスポータルサイトなど、多彩な取組みが展開される中、コミュニティビジネスの視点では、駅前の好立地に安価な賃料で提供されたコミュニティオフィスや、コミュニティビジネスを行うNPO法人などを対象とした「コミュニティビジネス事業者専用ローン」が注目されます。

信用力の弱さから、融資をうけるためのハードルが高いNPO法人をはじめとするコミュニティビジネス団体ですが、平成18年度は36件の融資が実行されるなど、コミュニティビジネスのスタートアップにとっては、大きな力となっています。



参加してくださった皆さま、ありがとうございました。

裏話ですが、今回は事前にお申込いただいていた方の参加がパーフェクトでした。
これまでも多くの講座を開催してきましたが、毎回、当日の欠席はどうしても数名は出ます。
内心、今回も何人かの方は欠席されるだろうと予測していましたが、うれしい誤算で全員出席でした。

今回の講座では、参加者さんどうしの交流が活発であったということも特徴的でした。
講座の間の休憩時間も、終了後も、互いに名刺交換する方が多くいらっしゃって、ただの座学ではない、その後につながる講座になっているということは、開催者としてもうれしいかぎりでした。

一方、事例発表では、
企業側から「地域のNPOなどと連携していく上での課題、問題点」を聞きたかったというご意見をいただきました。
また、、NPO側から企業への「提案・要望」を伝えるなどの情報交換ができればよかった、というご意見もありました。

今回の講座を入り口として、さらに深い情報交換、つぎのアクションにつながる意見交換の場の提供というニーズがあることがわかり、取組みへの課題をMystyle@こだいら自身もいただきました。

今後に活かしてまいります。